sports_boxing_businesswoman

1: 僕は名無し 2021/05/10(月) 21:58:36.823 ID:2OeHgY5Q0
女「あ、パン屋さんだ。入ってみようかな」

店に入る。

女「…………?」

女(パン屋なのにパンが置いてない……?)

店主「いらっしゃい」

女「あの、パンを買いにきたんですけど……パンは?」

店主「パン? 食べるパンなんかないよ。ウチは腹パン屋だ」

女「腹パン屋……?」

店主「初回サービス」シュッ

ドズゥッ!

女「うげえっ!」

5: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:02:20.134 ID:2OeHgY5Q0
女「い、いきなり何を……!」ゲホッ

店主「腹パンチ。通称“腹パン”だ」

女「ふざけ……ないで! いきなり人を殴って……! お腹が痛……!」

女「あれ? 痛くない?」

女(それどころか、腸の動きが活発になって……。三日は出てなかったお通じが……)

店主「トイレはあっちにある」

女「あ、ありがとうっ!」タタタッ

7: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:05:16.175 ID:2OeHgY5Q0
女「スッキリ……」

店主「晴れやかないい笑顔だ」

女「お代はいくら?」

店主「初回サービスといったろ。タダでいい」

女「ありがとう……ございます」

店主「どういたしまして。またお越し下さいませ」

女(一目で私の体調を見抜いて、最適な腹パンをやってのけたというの……!?)

女(これが……腹パン屋……)

10: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:09:15.565 ID:2OeHgY5Q0
数日後――

女(また来ちゃった。この腹パン屋に……)

女「え!?」



『アルバイト募集 業務内容:簡単な接客・売上の管理等』



女(この前はこんなポスターなかったのに……)

女「あ、あのっ! バイト募集のポスターを見たんですけど――」

12: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:12:09.238 ID:2OeHgY5Q0
店主「いいだろう、雇おう」

女「ありがとうございます!」

店主「明日から来れるか?」

女「はい!」



女(簡単な面接の後、拍子抜けするほどあっさりと採用は決まった)

女(私の腹パン屋店員としての生活が始まる……)

14: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:16:08.666 ID:2OeHgY5Q0
……

女「おはようございます」

店主「おはよう」

女「いきなり失礼な質問しちゃいますけど、腹パン屋ってお客来るんですか?」

店主「そう思うだろ? だが、これが意外と来るもんなんだ」

女「へえ……」

店主「ほらさっそく来た」

女「え……!」

15: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:20:34.203 ID:2OeHgY5Q0
青年「すみませーん」

女「いらっしゃいませー!」

青年「え……どなた?」

女「ああ、今日からこちらに勤めることになったんです」

青年「そうだったんですか」

店主「さて、今日はどんな腹パンを希望する?」

青年「最近食欲がなくて痩せちゃったんで、食欲が出る腹パンをお願いします」

店主「分かった」

ズンッ!

青年「ぐふぅっ!」

女「私の時みたいにいきなり!」

店主「不意打ちの方が余計な力がかかってなくて、より効果が出るんだ」

17: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:23:17.921 ID:2OeHgY5Q0
店主「どうだ?」

青年「ううっ……!」ギュルルル…

青年「食欲が……食欲が湧いてきました! 今すぐなにか食べたい! 胃の中に入れたい!」

店主「ここから80メートル行ったところにあるパン屋に行くといい」

青年「はい、そうします! ありがとうございました!」

女「パン屋あるんだ!」

18: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:26:10.756 ID:2OeHgY5Q0
……

女「いらっしゃいませー」

会社員「ストレスで胃がおかしくて……」

店主「ストレス……ということはこの腹パンでいいかな」

ドムッ!

会社員「はぐうっ!」

会社員「おおっ、胃薬を飲んでも治らなかった胃の痛みが消えた!」

19: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:26:19.580 ID:ZqFbyI2Kr
パン屋も儲かるな

20: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:27:52.705 ID:I60sw40a0
的確に経絡秘孔を突いてるんだな

21: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:29:21.256 ID:2OeHgY5Q0
女「いやー、とても忙しいですね。腹パン屋さんって!」

店主「だろ。腹パンを欲している人は多いんだ」

女「じゃ、今日の売り上げの管理しておきますね」

店主「ああ、もし金を持ち逃げしたりしたら……」

女「したら?」

店主「とっておきの腹パンをする」

女「絶対しないから大丈夫です!」

22: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:33:25.399 ID:2OeHgY5Q0
……

学生「逆流性食道炎だっていわれちゃって……」

女「あー、胃液が上にいっちゃうやつですか。苦しいらしいですね」

学生「そうなんです……。食道が胃液で荒れちゃうっていいますし……」

店主「だが、腹パンがあれば恐れるものではない」

店主「少々ねじり込むように――」

ドフッ!

学生「んほぉっ!」

23: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:35:37.327 ID:2OeHgY5Q0
学生「おや……? 胃袋の様子が……?」ギュルルッ…

店主「胃にねじり込むように腹パンを決めることで、引力を発生させた」

店主「これで胃液が食道に登ってしまうことはないはずだ」

女「すごい! 丁寧に説明してるようでいてまるで意味不明!」

店主「とはいえ、応急処置のようなものだ」

店主「逆流性食道炎の原因といわれる大食いや早食い、食後すぐ寝るのなどは控えてくれ」

学生「そうします。ありがとうございました!」

女「腹パンは引力さえ発生させちゃうんですね」

店主「そう、俺もまた腹パンに引き寄せられた人間だからな」

25: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:39:45.757 ID:2OeHgY5Q0
……

妊婦「あのぉ~」

女「いらっしゃいませ……ってそのお腹はまさか!」

妊婦「はい、私妊婦です」

女(どうして妊婦さんがよりによってこの店に……!?)

店主「ああ、妊婦さん。さっそく腹パンを行おう」

女「ちょっと待って! 妊婦さんに腹パンなんて絶対許さない!」バッ

店主「心配するな。赤子を傷つけるようなことはしない」

妊婦「ええ、むしろ腹パンして欲しいんです」

女「え……?」

26: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:42:19.052 ID:2OeHgY5Q0
店主「…………」ポフポフポフポフポフ

妊婦「あっ、喜んでる喜んでる」

女「リズミカルに腹パンを……」

妊婦「店主さんの腹パンは、胎児にいい影響を与えるって評判なんですよ」

妊婦「本格的に論文にしようとしてるお医者さんもいるとか……」

女「腹パンって胎教もできるんですね……」

店主「俺だからできることだがな。素人は絶対マネしちゃダメだ」

27: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:46:31.226 ID:2OeHgY5Q0
ある日――

プルルルル…

店主「はい、腹パン屋です」

店主「分かりました。すぐ伺います」

女「どうしました?」

店主「出張サービスだ」

女「出張サービスまでやってるんですか、この店!」

店主「今の時代、それぐらいサービスがよくないと腹パン業も厳しいからな」

女「サービスが悪くても成り立ってた時代があったような言い方しないで下さい」

店主「よかったら一緒に来るか?」

女「行きます!」

女(どんなことするのか気になるし!)

28: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:49:21.714 ID:2OeHgY5Q0
ある夫婦の家――

店主「ここだな」

女「緊張してきました……」

女「あら、ワンちゃんだ」

犬「クゥ~ン……」

女「どことなく元気がありませんね」

店主「…………」

29: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:52:12.900 ID:2OeHgY5Q0
夫「あ、来てくれましたね。腹パン屋さん!」

妻「お待ちしてましたわ!」

店主「ご用件は?」

夫「この妻に腹パンしてやって下さい! それはもう思いっきり!」

妻「いいえ、夫に腹パンしてやって! 数時間は立てないほどの一撃を!」

女(なんなのいきなり!?)

店主「腹パンする前に、事情を話して頂きたい」

30: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:53:40.028 ID:ZqFbyI2Kr
両方殴ろう

31: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:55:27.156 ID:2OeHgY5Q0
妻「聞いてちょうだい。夫が大切な結婚指輪をなくしてしまったのよ!」

妻「こんな奴は腹パンの刑よ! 苦しむべきなのよ!」

夫「だからなくしたとは決まってないだろ!」

夫「そんなことで怒るなんて、お前こそ腹パンだ! 腹パン!」

妻「なんですって!」

ギャーギャーッ!

女「落ちついて下さい! 冷静になって!」

犬「クゥン……」

女「ほら、ワンちゃんも心配してますよ!」

女(店長……こんなムチャな二人をどうするんだろう?)

店主「…………」

32: 僕は名無し 2021/05/10(月) 22:58:20.781 ID:2OeHgY5Q0
店主「指輪がどこにあるか……分かりました」

夫妻「え!?」

女「どこですか!?」

店主「犯人は……」

店主「お前だ!」

ドムッ!

犬「ギャンッ!」

女(ワンちゃんのお腹を殴った!)

夫「うわっ!?」

妻「ポチになんてことするの!」

35: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:01:17.417 ID:2OeHgY5Q0
犬「キャンッ!」ペッ

コロコロ…

夫「あ……」

妻「指輪だわ!」

店主「なにかの拍子に飲み込んでしまったんだろう」

女「だから苦しがってたのね。おお、よしよし。やっとスッキリできたね」ナデナデ

犬「ハッ、ハッ、ハッ」

36: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:03:57.545 ID:2OeHgY5Q0
妻「ごめんなさい、あなた! ポチが飲み込んだだけだったのに……」

夫「俺こそごめん! 指輪の管理を杜撰にしてたから……」

イチャイチャイチャ…

女「今までの反動か、ものすごくイチャイチャしてますね」

犬「ワン……」フゥ…

女「あらら、ワンちゃんも呆れてる」

店主「夫婦喧嘩はもちろん、夫婦ノロケも犬は食わないってことだろう。帰るぞ」

37: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:06:40.146 ID:2OeHgY5Q0
女(店が終わると店長は――)



店主「ふんっ! ふんっ! むんっ!」

ドスッ! ボスッ! ドスゥッ!



女(サンドバッグに向かって腹パンの練習をする。……すごい迫力)

38: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:10:35.356 ID:2OeHgY5Q0
女「店長ってずっと昔から腹パン屋だったんですか?」

店主「いや、元はサラリーマンだった」

女「まさかの脱サラ!?」

女「いったいどんな企業に……あ、分かった。パン関係の企業とか?」

店主「パックご飯の販売をしてた」

女「そっちですか! だけどどうして腹パンの世界に……?」

店主「会社勤めも決して悪くなかったんだが、俺は元々腹パンに興味があってな」

店主「何年か働いて、やはり腹パンで食べていく道を進んでみたくなったんだ」

女(ありがちな脱サラ話なのに、“腹パン”ってだけで異様な話に聞こえちゃう)

39: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:13:00.079 ID:2OeHgY5Q0
女「店長とて、最初から腹パンの達人ってわけじゃなかったんですよね?」

店主「もちろんだ」

女「ということは店を開くまでは、さっきみたいにサンドバッグで訓練したんですか?」

店主「それもあるが、腹パンはお腹を殴るパンチだからな。自分も実験台にしたよ」

女「ええっ!? つまり、自分のお腹を……?」

店主「ああ、やはりお腹を殴らなきゃ腹パンのコツは掴めないからな」

店主「かといって未熟な腹パンを他人には打てないから、ひたすら自分を殴った」

女「痛くなかったんですか?」

店主「そりゃ痛いさ。お腹はアザだらけになったし、嘔吐したこともある」

女「えええ……」

40: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:15:44.622 ID:2OeHgY5Q0
店主「だが、ある日――」



店主『もう一発!』ボフッ!

店主『ぐふっ……! こ、これだ! この腹パンだ! これを応用すれば……!』



店主「人を傷つけるだけではない腹パンのコツをようやく掴んだ時は嬉しかった……」

女「ブレイクスルー的なエピソードなのにドMエピソードに聞こえちゃいますね」

41: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:16:49.836 ID:tlDXOs/e0
文才あるねえ

43: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:18:29.986 ID:2OeHgY5Q0
……

女「いらっしゃいませー」

マッチョ「ガッハッハッハ!」

女(わっ、大きい人! どこかで見たことあるような……)

店主「あんたか」

マッチョ「あれからさらに筋肉を鍛えた! 今日こそあんたの腹パンに耐えてやるぜ!」

マッチョ「本気で来いやァ!」

店主「いいだろう」

女(そっか、時にはこういう挑戦者もいるんだ……)

44: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:21:30.487 ID:2OeHgY5Q0
店主「じゃ、行くぞ。手加減なしだ」

マッチョ「来い!」ムキィッ

店主「ハァッ!」

ズドンッ……!

マッチョ「…………ッ!」

マッチョ「が、は……っ!」ガクッ

女「こんな大きな人を一発で……!」

店主「他のパンチじゃ歯が立たないだろうが、さすがに腹パンでは負けられないさ」

45: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:24:33.092 ID:2OeHgY5Q0
マッチョ「うぐぐ……! おええっ……!」

女「大丈夫ですか……?」

マッチョ「また来る! 今度こそ耐えてやるぜ!」

ヨロヨロ…

女「行っちゃった……なんなんですかあの人?」

店主「元はちょっと筋トレ好きぐらいの男だったが、俺の腹パンを受けて悶絶してから」

店主「俺の腹パンに耐えるべく体を鍛えるのが日課になってしまったんだ」

店主「もし、俺と出会ってなかったら、もっと違う人生を歩んでたかもしれん」

女「なんだか、ちょっと可哀想ですね」

46: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:25:25.170 ID:ZqFbyI2Kr
店主強い

47: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:27:30.199 ID:2OeHgY5Q0
店主「だが、奴は俺なんかよりよっぽど稼いでるけどな」

女「え、そうなんですか?」

店主「あの体格を生かして、マッチョ系俳優として活躍してるし――」

女「どうりで見覚えがあると思いました!」

店主「ジムの指導員としても優秀で、かなりの高待遇で雇われてると聞く」

女「へええ……」

店主「もし、いつか店の経営が苦しくなったら、“その筋肉があるのは誰のおかげだ?”と」

店主「金を借りに行くのもいいかもしれん」

女「店長って意外と腹黒いですよね」

バイトの日々は平穏に過ぎていくと思われたが――

48: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:30:12.170 ID:2OeHgY5Q0
そんなある日――

ザッザッザッ…

金髪「…………」

金髪「相変わらず、腹パン屋をやってるようだな」

女「いらっしゃいませー」

女「!」

金髪「へえ、従業員を雇うようになったのか。ご立派なことだ」

女(なにこの人……危険な匂いがする……!)

50: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:33:44.912 ID:2OeHgY5Q0
店主「久しぶりだな」

女「店長! この人は……?」

店主「こいつは“肩パン”の達人だ」

女「肩パン……!」

金髪「久しぶりにやり合おうと思ってな。訪ねて来ちまったぜ」

店主「危ないから下がっていろ」

女「は、はいっ!」サッ

女(まさかの宿敵登場……! いったいどうなってしまうの!?)

51: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:37:10.950 ID:2OeHgY5Q0
金髪「行くぜェ!」

バキィッ!

店主「ぐうっ……!」メキメキ…

女(ものすごい肩パン!)

店主「お返しだ」

ズドォッ!

金髪「ごふうっ!」ゲホォッ

女(負けじと店長も腹パンを返すゥ! 怪獣映画を見てるような迫力!)

52: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:40:34.592 ID:2OeHgY5Q0
店主「…………」ニコッ

金髪「…………」ニヤッ

店主「おかげで肩が楽になったよ」

金髪「俺も……腹の具合がよくなった」

女「ええっ!? 戦いじゃなかったんですか!?」

店主「戦い? そんなことするもんか」

金髪「俺らはプロだ。よほどの緊急事態か、相手から望むわけじゃない限り」

金髪「相手を傷つけるようなパンチは打たねえさ」

女「なるほど……」

53: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:42:10.098 ID:2OeHgY5Q0
女「あのう……肩パン屋さん」

金髪「ん?」

女「私にも肩パンしてもらっていいですか?」

金髪「いいぜ。ちょっと凝ってるみたいだしな」

ドゴォッ!

女「はうううっ!」メキゴキベキ…

54: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:44:24.344 ID:2OeHgY5Q0
女「肩がかるーい!」

女「肩にヘリウムガスが入ったみたい!」グルグル

店主「そのまま飛んでいくなよ」

金髪「久々に会えて、楽しかったぜ」

店主「俺もだ」

金髪「また会おう」ザッ…

ザッザッザッ…

店主「奴とは……いずれ決着をつけねばな」

女「どうやってつけるんですか、決着」

55: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:48:08.647 ID:2OeHgY5Q0
……

店主「ほれっ!」

ドズゥッ!

客「あっ、荒れてた胃袋が治っていくぅぅぅ……!」

女「またお越し下さいませー!」

店主「今日はもう客は来ないだろう。店じまいにしよう」

女「分かりました」

……

女「あの、店長……」

店主「なんだ?」

56: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:51:28.634 ID:2OeHgY5Q0
女「私にも腹パンを教えてくれませんか?」

店主「! ……なぜだ?」

女「上手くいえないんですけど、ずっとバイトしてたら、私もちょっと習ってみたくなったっていうか……」

女「せめて、その……護身術として身につけようかと」

店主「…………」

店主「構わないぞ」

女「ありがとうございます!」

店主「最初はサンドバッグ打ちからだな。こっちに来てくれ」

57: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:53:16.696 ID:2OeHgY5Q0
店主「サンドバッグのこの辺りに、抉り込むように打つんだ!」

女「はいっ!」

ボスッ!

店主「もっと強く!」

女「はいっ!」ドスッ!

店主「捻りを加えて!」

女「はいっ!」ドスゥッ!

店主「踏み込みが甘い!」

女「はいっ!」ズドォ!

店主(なんとなく予感はしてたが……これはかなりの才能の持ち主だ)

58: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:53:43.274 ID:KUwd7Lnm0
16連腹パンチ!

59: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:56:43.434 ID:2OeHgY5Q0
……

女「えいっ! ええいっ!」

ドスッ! ズドォッ!

店主「…………」

店主「あれから二週間、だいぶよくなってきたな」

女「ありがとうございます!」

店主「じゃあ、そろそろ俺の腹を殴ってみろ」

女「えっ、でも……!」

店主「人間の体を殴らなきゃ腹パンの完成はありえない」

店主「心配するな。俺だってそうヤワじゃないさ」

女「……分かりました! 胸を借り……いえ、腹をお借りします!」

60: 僕は名無し 2021/05/10(月) 23:59:18.678 ID:2OeHgY5Q0
女「行きます!」

店主「来い」

女「でぇいっ!」

ズンッ!

店主「…………ッ!」

店主「いい……パンチだ……!」

女「ホントですか!?」

店主「もっと練習を続ければ、人を生かす腹パンも可能になるだろう……」

女「ありがとうございます、店長!」

61: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:04:35.756 ID:PavgwpWi0
……

女「あーあ、もう真っ暗」

女(今日は遅くなっちゃった。早く家に帰らなきゃ……)

スタスタ…

女(ん?)

女(私の他に……誰かいる?)

女(ただ単に近くを歩いてるだけだよね。きっとそうよ)

62: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:08:14.110 ID:PavgwpWi0
変質者「ぐへへへへ……」

女「きゃあっ!」

変質者「い~い悲鳴だァ!」

女「な、なんですかあなた!」

変質者「抱きついてやる! ハグしてやるぅ~! 押し倒してやるゥ~!」

女「い、いや……やめて……!」

変質者「震えてやがる……最高ォ! もっと俺を怖がれ! 楽しませろォ!」

女「…………!」

女(怖がってばかりじゃダメ……戦わなきゃ! 今の私には武器があるじゃない!)

63: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:08:30.237 ID:nCiOa0GSM
お前だよ!

64: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:11:34.002 ID:PavgwpWi0
女「…………」スッ

変質者「お? 観念したか」

女「観念? 残念なのは、あんたよっ! ――ふんっ!」



ズドォッ!



変質者「ぐごふぅぅぅぅっ!?」

女「や、やった……!」

65: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:15:25.800 ID:PavgwpWi0
変質者「あ、がふっ……!」

女「ちょっとやりすぎちゃったかも……」

変質者「う、うええっ……」

女「あの、大丈夫ですか?」

変質者「お、おふっ……」

女「おふ?」

変質者「お袋の……お袋の腹パンとそっくりだぁ……懐かしい……」ポロポロ

女「どんな幼少期を過ごしてきたの!?」

変質者「俺……自首しますっ!」

女(とりあえず改心してくれたようでよかった……)

67: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:19:17.892 ID:PavgwpWi0
―警察署―

警官「お手柄でした。最近被害が多かったんですが、なかなか捕まえられずにいたんですよ」

女「いえ、こちらこそ」

店主「大丈夫だったか?」

女「はい、店長が教えてくれた腹パンのおかげで助かりました!」

店主「そうか、よかった。今度からは帰りが遅くならないよう配慮するよ」

女「気にしないで下さい」

女「あ、それとお願いがあるんですけど……」

店主「なんだ?」

68: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:24:06.216 ID:PavgwpWi0
女「さっき……あの犯人を殴った時、私の中で何かが弾けたんです」

店主「!」

女「私……もっと殴りたい! 腹パンしたい!」

女「大勢の人に腹パンを喰らわせて、世の中の役に立ちたいんです!」

女「だからもっともっと腹パンを教えて下さい!」

店主「…………」

店主「どうやら……目覚めてしまったようだな。この道に」ニコッ

女「はいっ!」

70: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:29:10.176 ID:PavgwpWi0
それからというもの――

店主「さ、店じまいだ」

女「じゃあ、今日もよろしくお願いします!」

店主「ああ、今日は胃袋を回復させる腹パンを教える」

店主「まず、やらなければならないのが胃袋の位置の把握だ」

店主「誤った箇所を殴ると、ただの腹パンになってしまうからな」

女「なるほどなるほど……」

71: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:29:18.444 ID:GPDbuYrnM
私でよければ

72: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:32:42.860 ID:PavgwpWi0
女「ていっ! でいっ! せいいっ!」

ドスッ! ドズッ! ドゴッ!

揺れるサンドバッグ。

店主「ラスト一発、思いっきり殴ってみろ!」

女「ふんっ!」

ドズゥッ……!

73: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:36:54.368 ID:PavgwpWi0
やがて――

店主「だいぶ腹パンも上達したな」

女「ありがとうございます。店長のおかげです」

店主「店も繁盛してきたし、この際だからバイトよりももっと上の形……」

店主「≪正式な従業員≫として雇いたいんだが、どうだろう?」

女「よろしくお願いします! 精一杯腹パンします!」

74: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:40:24.874 ID:PavgwpWi0
……

……

女「いらっしゃいませー」

中年「酒の飲みすぎで、お腹がおかしくてね……」

女「なるほど……たしかに胃がだいぶ荒れてますね」

女「店長、このお客さんは私が腹パンしてもいいですか?」

店主「いいとも、任せる」

女「よっしゃ!」

中年「だ、大丈夫かい?」

女「任せて下さい!」

75: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:44:13.940 ID:PavgwpWi0
女「せぇの!」

ドズッ!

中年「うぐほっ! こ、こいつは効く……!」

中年「む……」

中年「……おお、胃のムカムカが解消した!」

女「ついでに肝臓も回復させておきました。お酒の飲みすぎはいけませんよ」

店主「見事な腹パンだ。俺も負けてられないな」

女「いえ、まだまだ店長には敵いませんよ……。もっと練習しないと!」

76: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:48:10.937 ID:PavgwpWi0
店主「今日も大勢のお客さんが来るだろう。一人じゃとても捌き切れない」

店主「頼むぞ、相棒!」

女「はいっ! たくさんお腹を殴りまくります!」



腹パンチで皆様に笑顔を届ける≪腹パン屋≫は、本日も営業中――







―おわり―

77: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:50:00.703 ID:XcSFmOBr0
おつ

79: 僕は名無し 2021/05/11(火) 00:56:10.721 ID:pvQzQPvQ0
乙です面白かった
自分も腹パンの話書いてるところだったからこんな時間まで読んじゃったよ

80: 僕は名無し 2021/05/11(火) 01:04:15.830 ID:ooBXEym1r

俺も1発この店で腹パンしてもらいたい